調査開始から5年で「働きがい」のスコアが約2倍に
目指すはグループ2万人超が主体的に働く自律型組織
TIS株式会社
代表取締役社長 岡本 安史 様
人事本部 人材戦略部 ダイバーシティ&インクルージョン推進室長 細谷 悦子 様
更新日 2025.09.182022.03.15
調査開始から5年で「働きがい」のスコアが約2倍に
目指すはグループ2万人超が主体的に働く自律型組織
TIS株式会社
代表取締役社長 岡本 安史 様
人事本部 人材戦略部 ダイバーシティ&インクルージョン推進室長 細谷 悦子 様
日本のITリーディングカンパニーとして、キャッシュレス決済や電力のようなインフラから、産業・公共を支えるサービスまで、社会基盤をITで支えているTIS株式会社。「働きがいのある会社調査」(Great Place to Work® Institute Japan)の調査スコアも年々向上し、確実に組織に変革が起こっています。そんな同社が「働きがい向上」を経営目標として取り組む理由や、ここ5年間のスコア向上につながった取り組みについて、代表取締役社長の岡本様と、人事本部 人材戦略部 ダイバーシティ&インクルージョン推進室長 細谷様に伺いました。
<記事のポイント>
✔「働きがい」を経営指標へ。まず手を付けたのは「働きやすさ」
✔大きな転機となったトップからの「理念浸透」と人事の「マニフェスト実行」
✔TIS株式会社の成功事例を今後はグループ各社へ
岡本様 当社にとって人は財産です。システムを構築して運用していくのはほかならぬ人ですから、「全ての基盤が人である」という前提に立っています。だからこそ、月曜日の朝「会社に行きたくない」とか、金曜日の夜「明日から会社に行かなくてすむ」と思われるような会社であってはなりません。それでは当然、生産性も上がらないし、良いものもつくれないでしょう。社会は厳しいところですが、仲間と一緒に課題を乗り越え、仕事を通じて社会に価値を提供し、「働きがい」を感じてほしいと願っています。社員が働きがいを感じるのは、能動的に仕事をしている状態が大前提だと思います。調査を始めた当初、とある組織 の「働きがいのある会社調査」のスコアが非常に高かったのですが、その理由は「自分たちでサービスを考え、創り出していたから」でした。どちらかというと受動的になりがちなSIer業務の中で、お客様とパートナーシップを組んで、共に学び、サービスをつくるという一連の活動を、能動的にしているから、「働きがい」を感じていたのだと思います。その時、「働きがい」を高めるためには、自分の挑戦したいWILLに向かって能動的に仕事をすることが、最も大事だということに改めて気づかされました。
細谷様 社員の働きがいは、何かのきっかけで一気に上がるということはありません。2016年に働きがいのある会社調査を開始し、少しずつ地道な改善を重ねた結果、現在は「働きがいのある会社である」と感じる社員のスコアが、開始時の2倍近くになりました。人事部として、取り組みの当初は、まず衛生要因(働きやすさ)の改善に注力しました。各種人事制度の充実、育児介護の両立支援、社員教育への投資など、全社員にメリットがある「働きがい」の向上に努めてきました。衛生要因が満たされた状態で、さらにしっかりと動機づけができれば、より社員に響くと考えていたからです。働き方の選択肢が増え、社内環境や制度整備が目に見えて進んだことで、会社が変わってきたことを社員も徐々に実感してくれたと思っています。
岡本様 社員への発信頻度を高めたことも、働きがいの向上につながっていると思います。私からメッセージを出すタイミングは当初は年度の初めだけでしたが、3カ月に1回へと変更しました。 メッセージの核にあるのは「OUR PHILOSOPHY」という経営理念です。元々25年程前に作った理念でしたが、2018年に再度作り直しを行いました。繰り返し「OUR PHILOSOPHY」を考える機会をつくり、社員と共に浸透させていくことが不可欠だと思います。 私が一人で機関車のように走り回ってもできることには限界があります。それぞれが自立してビジネスに邁進してもらうことが重要です。社長にできることは、ビジネスを成功させるためにみんなのベクトルを合わせることだと考えています。
細谷様 衛生要因がある程度満たされ、「OUR PHILOSOPHY」の浸透により動機付けを行うのと同じ時期に、人事本部からも「人事本部マニフェスト」を出しています。これは全社で取り組む施策について、「なぜ取り組むのか」「それがどう役立つのか」を公表し、活動計画と実績 を公開するというものです。働きがいを重視することを発信して、ビジョンに沿った人材戦略をとっていくことが、「人事本部マニフェスト」の基本的な考え方です。エンゲージメント向上を人材戦略の重要なファクターとしてとらえ、スコアをもとに結果を分析。期中にも中間サーベイを実施して経営陣と確認・合意しながらPDCAをまわしています。150以上の部室がありますが、「働きがいのある会社調査」を含め、各種サーベイの結果を、かなり細かいところまで読みこんでいます。改善点は組織によって異なることが多く、「ここが悪いからこう直せば、全社的によくなる」というものではありません。また変革を自走して行う組織もあれば、そうではない組織もあるので、人事が直接行う「組織開発支援」という取り組みを始めています。人事が介入し、どこがレバレッジポイントになるのか念入りに探し、現場でのヒアリングを重ねながら、組織長と一緒に改善に向けた施策を推進しています。